評価の“軸”をどのように設定する?

評価項目は着眼点の明確化だけではなく、『軸』の設定も重要な要素!

評価の軸ーその設定方法の考え方

 上段ページの“ヒント②”では『評価の着眼点の明確化』ということで、評価項目の表現方法についてのアドバイスを中心にご説明させていただきました。

 ではその着眼点をどのような視点から設けていけばよいのでしょうか?

 こちらのページでは、そもそもそれらの評価項目をどのような視点や軸でもって設定していけばよいのかということをご説明させていただければと思います。

 *なお、事例の掲載に付きましては、実際の事例をベースにしておりますが、当方でアレンジや修正を加えております。

 

 “評価の着眼点”の表現方法の留意点につきましてはこちらのページをご覧ください。

 

評価の2軸と3つの視点

 評価制度のリフォームにおいて当事務所が主に推奨しているのは、

 評価の軸を

  1⃣プロセス

  2⃣成果 

というの2つの軸で設計します。

 1⃣プロセスの軸は2つの視点、つまり

  ①技術視点⇒~ができる(スキルの部分)

  ②行動視点⇒~をしている(コンピテンシーの部分)

          に分割して評価の着眼点を設計していきます。 

評価の2軸 3つの視点
1⃣プロセス

■スキル⇒視点①:できる=技術、、スキル

■行動 ⇒視点②:している=コンピテンシー

2⃣成果 ■結果 ⇒視点③:やったこと 

  *プロセス評価について、ホワイトカラー職の多い職場では『視点①:できる=技術』は『視点②:コンピテンシー』に組み込んで設計しても制度上は影響はありません。

 

 1⃣①プロセス評価のうちスキル評価の例

美容関連クリニック 医療スタッフの施術スキル番付
  田中 中山 岡田 三村 森田 高橋
レーザー照射(サーマクール、ウルセラ等)  ☆  ■  ●  ■  ■  ▲
クルスカ(クールスカルプティング)  ▲  ☆  ●  ■  ▲  ▲
HIFU(高密度焦点式超音波治療)  ×  ×  ×  ×  ▲  ×
ケミカルピーリング  ×  ×  ×  ×  ▲  ×
各種注射、点滴治療の窄刺技術  ●  ●  ■  ■  ■  ☆
PRP治療  ■  ●  ☆  ●  ▲  ▲

 ☆:横綱(業界でも一流) ●:大関(院内では一流) ■:関脇(仕事をする上では支障なし) ▲:十両(一応使えるレベル) ×:幕下(使えない)     *スタッフ名は仮名

 エンジニア職や医療技術者にはこういった切口のプロセス評価も取り入れていけば、評価の納得性が得やすいたけではなく、今後の高度技術取得へのモチベーションともなります。もちろん、このスキル評価に関しても経営者や部門長の『さじ加減』で決めるのではなく『どうなれば横綱、大関クラスになれるのか』という各従業員が目標にできるような明確な基準が必要になります。

 

 1⃣②行動=コンピテンシー評価の設計手順

 コンピテンシーとは当サイトの『コンピテンシー導入サービス』でもお伝えしている通り、高い業績を挙げる社員の共通した行動様式、つまり『仕事のできるヒトの行動』のことです。高い業績に結び付く行動、会社が期待する行動を評価制度に組み込むことによって、全社的な底上げも期待できる内容となります。当事務所の制度リフォームスキームではこの行動評価を以下の3分野別に検討していきます。

  ⅰ)全社共通コンピテンシー

    基本的に経営者のマインドを反映するように設計していくのがポイントです。

  ⅱ)職種別コンピテンシー

   現場のキーマンにヒアリングし成果に繋がる行動を炙りだします。

  ⅲ)マネジメントコンピテンシー

    管理職社員に必要な行動は各社、各部署においてそれぞれだと思います。

    各社の特色に合ったオンリーワンのものができてくるでしょう。

 

 2⃣成果の評価(結果⇒やったことの評価)

  成果の評価軸の設定の仕方については、一人一人に明確な業務目標を与えるやり方と、まずチーム共通目標を設定し、個々の目標にブレークダウンする手法の2通りのやり方があります。個人の裁量度があまりなく、チーム主体で動くことが多い部署、例えば製造現場等のケースであれば、個人的な目標を持たせるよりは、チーム目標を持たせた方が結果としてチームワークが高まり、業績、能率が上がります。いづれにせよ、評価の項目や着眼点は、『会社業績につながるもの』『会社の現状の課題を解決するもの』でなくてはなりません。設定に当たっては当然その『切り口』が重要になってきます。

 

業績・成果の評価(個人の業績)ー事例1

成果の評価項目(例)

 *会社の業績や課題とリンクするように!

指標(例)

*会社の業績や課題にリンクするように!

達成度の表現(例)

*具体的な事実または数値で申告

業績の成果

◆目標売り上げの達成度

◆目標利益の達成度

・売上:実績XXXX万円(VS目標OOOO万円) ⇒達成度102.2%

・利益:実績△△△万円(VS目標◇◇◇万円)     ⇒達成度97%

部下育成の成果

◆部下のスキル向上

◆パート社員のレベルアップ

◆部下の定着率の向上

・○○を育て、あべの店の店長に引き上げた

・パートの●●さんをパートのチーフに育てた。

・評価期間中の担当区域における退職者はゼロ

業務改善の成果

◆残業時間の削減

◆労務費の削減

◆クレーム率の低下

◆滞留在庫の削減

 

・評価期間中のスタッフの延べ残業時間200時間削減

・労務費を対前年比12%削減

・在庫流動率を前年度64%から今年度78%に改善

 

バランス・スコア・カード(BSC)の視点からの業績評価

業績評価はバランス・スコア・カード(BSC)を用いて、大括りな視点を設定し、各視点ごとに難易度や優先度(ウェイト)を設定し、組織や個人の課題に紐づけしていくケースもあります。

 

BSCを使った業績評価ー事例2
達成の指標 難易度 ウェイト

達成計画(どのように)

*詳細はコンピテンシー=行動評価の所で表現

①財務的視点 A・B・C

60

・チーム全体の見込み客の訪問 30件/1日

・セミナーの主催 2件/月 参加人数 60名/月

・要員計画の立案、実施

・スタッフの残業時間管理および要員調整

◆売上目標:〇億△千万円 利益目標:□億▽千万円

◆期中の課内の総人件費を XXXX万円に抑える

②顧客の視点

A・B・C

20

・出荷時の検品体制の徹底 

・クレーム後の検証・再発防止策の構築

・若手社員の対人・マナー研修の実施

◆期中のクレーム発生数を対前期比の50%以下とする
③業務プロセスの視点 A・B・C

10

・各スタッフの業務の棚卸し

・重要度、緊急度を観点にした業務の優先順位付け

◆期中のスタッフ個々の業務量を一律20%削減
④能力向上(成長)の視点 A・B・C

10

・毎月1回の定期勉強会の実施

・隔週1回の個人面談の実施

◆メンバー全員が専門分野の技術レベル及び知識レベルを1ランクアップする

『プロセス評価』は果たして必要??ーその必要性の考察

適切なプロセス評価があきらめずに頑張る人材、チームを生み出します!

プロセス評価…その必要性とは?

 ここまで評価の軸として

 1.プロセスの軸

 2.成果の軸

 この2つの軸で運営していく評価制度をご説明させていただきました。

 

 『会社は成果を求めている!よって評価制度を導入するのであれば成果だけを求めるべきでは?わざわざプロセスを評価する意味がわからない』

 こういったご質問、ご意見もよくいただきます。

 確かに、企業や営利法人は売り上げや利益を継続して生み出さなければ、経営がジリ貧となり、やがては衰退してしまいます。成果優先の経営になるお気持ちはよくわかりますし、否定するつもりもございません。企業に『成果』が大切ということは間違いのない事実です。

 人間の根源的欲求とリンクするプロセス評価

 その一方で、従業員のモチベーション向上が会社の業績への影響も無視できません。クレイトン・アルダファというアメリカの心理学者が提唱したERG理論という人間が生まれながらにして持っている欲求について以下の3つに分類しています。

 ・生存欲求(今の時代に当てはめるとの給与額や雇用条件)

 ・関係欲求

 ・成長欲求

 の3つとされています。

また、この3つの根源的欲求のなかでも、特にモチベーションを刺激されるのが周りとの『関係欲求』と自身の『成長欲求』とされています。(ハースバーグ:動機付け衛生理論)

行動やスキルの点が評価されて、上司を含んだ周辺が認めてくれ、自身も成長を感じることができれば、従業員にとってはこれ以上ない動機付けに結び付きます。

 行動やスキルアップのプロセスをしっかり評価する体制、つまり従業員の『関係欲求』と『成長欲求』を刺激する制度を運用できれば、失敗してもあきらめずに挑戦する力を持った従業員たち、組織が出来上がる可能性が高いと言えるでしょう。

 こういった従業員たちが自分の給与の何倍もの付加価値のある仕事をやり遂げるようになり、組織が成長するという未来を創造していくには、やはりプロセス評価も大事な一つの要素になってくると言わざるをえません。

効果的な評価の軸を敷いて、従業員と組織の成長に繋げていきたいものです。

当事務所でも適切な『評価の軸』のご提案を含んだ、人事評価制度導入のお力添えさせていただいております。

効果的な評価軸を構築!人事評価制度設計サポート

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