人事制度、給与・退職金制度、デキる人材の採用・育成(戦力化)・定着を三位一体でサポート!
大阪人事コンサルティングセンター
運営)児島労務・法務事務所
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御社は今現在、従業員を評価するような制度を運用されてますか?もし導入されているのであれば、それは会社の業績アップと従業員の育成の双方にきちんと機能し、結果を残している制度でしょうか?
せっかく、高いコストをかけて評価制度、人事制度を導入したにも関わらず、“どうも会社の業績にうまくリンクしていない”と思われる経営者の方はこちらのページをご覧下さればと思います。
“成果主義”とは従業員の行動、過程やプロセスの部分をほとんど評価の対象にせず、業績の達成度のみを考課、評価するという人事制度、評価手法のことです。バブル崩壊後の国内企業の業績の悪化が拍車となり、2000年代の初頭から大企業を中心に、この手法がかなり流行りました。現在もその時の流行の名残でこういった“成果主義”に基づく人事制度を導入させている企業も数多く存在しています。
成果主義の運用が抱える問題点について
企業が発展し、生き残るにはもちろん“成果”が必要なことは言うまでもありません。“売り上げ”や“利益”などの成果が伴ってこそ企業の成長があることは疑いのない事実です。
よって、当事務所でも“成果主義”という考え方そのものを否定するつもりは毛頭ありませんが、“成果主義”を導入、運営する土壌が未成熟であるにも関わらずに、背伸びしてこういった制度を導入すると結果として運営に行き詰ってしまうということになり、事実そういった事例を数多く目にしています。
成果主義の人事制度には
・チームワークを無視した社員の個人主義化
・短期的な成果の結実のみを目指し、長期的展望が描けない
・目標を低く設定して達成度を高くしようとする
・人が育たない
・業績が数値化できないルーティン業務になじまない
等々の問題点が内包されていることを理解する必要があるでしょう。
特に現状、成果主義に基づく人事制度、評価制度を導入した企業でよく問題となる点は、“個人主義に傾倒しすぎている”ことにより、チームとしての機能が阻害される傾向にあることです。
個人の能力が優れた精鋭部隊の寄せ集めであれば、そういった評価の仕方も一つの方法ではありますが、なかなか人材が集まりにくい中小企業の場合、個人主義による評価と処遇は問題を引き起こすリスクは高いと考えます。
企業はチームとして厳しい市場の中で、ライバル企業と競争しなければなりません。チームとしての成果は単に各個人個人の成果を合計したものではなく、それ以上の成果のアウトプットがないとチーム(組織)として機能していないということになってしまいます。せっかく企業という形態で活動しているのだから、単なる個人商店の寄せ集めではなく、しっかり組織として機能していく体制を構築することを重視していく。という考え方にシフトするのはいかがでしょうか?
個人業績の達成度をのみを評価の尺度とする“成果主義”を押し付けるよりも、まず“社員の育成”、“ヒトという経営資産の活用”を念頭に入れ、“社員に成功体験をさせる”“社員に少し背伸びしたチャレンジ目標を設定させる”という風に、社員の育成に対してよいサイクルを生み出す仕掛けが必要になってきます。
当事務所が提供する人事制度・評価制度はそういったよいサイクルを生み出す仕掛けを形成していきます。
成果主義人事は従業員のやる気を奮起させるのか??
ー成果報酬制とモチベーションの関係についての考察
次に成果主義人事が従業員のやる気、つまりモチベーションに与える影響について、心理学的観点から考察していきます。
**こちらでは成果主義人事の中でも、成果が直接金銭的報酬に連動する“成果報酬型賃金制度”を例に採って見ていきます。
まず、金銭的報酬がモチベーションにどのように影響を与えていくかを知るために、ハーズバーグという心理学者が提唱した『動機付け衛生理論』という学説を紹介していきます。
人のモチベーションのアップダウンには『動機付け要因』と呼ばれる条件の関与と『衛生要因』と呼ばれる条件の関与が左右されると言われています。
・動機付け要因とは…
この条件が満たされると、モチベーションが大きくアップするが、たとえ満たされなかったとしてもさほどモチベーションの低下には影響しない。
例)自己の成長、昇進、仕事そのものの面白さ、目標の達成、職場の仲間からの承認や労い
・衛生要因とは…
この条件が満たされても大きなモチベーションアップには繋がらないが、この条件に不満を抱くとモチベーションの大きな低下を招く
例)労働条件、賃金、上司や同僚との人間関係、会社の方針や管理体制 等
この『動機付け衛生理論』では給与、賃金等の金銭的報酬については『衛生要因』と位置付けられています。つまり、たとえ満足しても大きなモチベーション向上にはつながらないが、不満を抱くと一気にやる気を失うタイプの条件ということです。
よって金銭的報酬については、やる気をアップさせることよりは、給与が引き下がるケースでの、従業員のモチベーション低下や離職のリスクを吟味した上で、給与制度や評価制度の導入や改訂を検討する必要があります。
・成果報酬型賃金制度とモチベーション
歩合給制度等、成果と報酬が直接連動する賃金制度を導入する場合、その賃金制度の下で業務をする従業員のモチベーションにはどのような影響が考えられるでしょうか?
例えば、『仕事そのものが面白い!楽しい!』『お客様やチームのみんなに役立っているのでやりがいを感じる!』『自分の仕事は世の中の役にたっている!』といった動機(こういった動機を“内発的動機”といいます)によってモチベーション高く仕事ができている状態にも関わらず、金銭的報酬という“外発的要因”が入ってくると、金銭的報酬の方に意識が振られてしまい、元々の“内発的動機”に起因した高いモチベーションが維持できないという状態になることが起こり得ます。こういった現象を心理学では『アンダーマイニング効果』と呼びます。
成果報酬型賃金制度は、以前よりそういった制度の下で働くことに慣れているような職種の人たちには抵抗なく受け入れられることが多い反面、そういった制度を導入することにより、従業員のモチベーションが低下してしまうリスクも念頭に置いておきべきでしょう。
成果報酬型賃金制度に代表させる、成果主義の人事制度の導入を考える際は、今の現場のモチベーションの高さや成果報酬型賃金制度に向く職種、業種かということを慎重に検討する必要があろうかと思います。
組織市民行動とは…
“組織市民行動”という言葉をご存知でしょうか?これは、誰の役割と決められた仕事ではなく、直接評価には関わらないが、組織のためになる行動、活動のことをいいます。
組織市民行動の例)
・共有スペースの整理整頓や清掃
・親睦を深めるための社内行事の企画や運営
・業務マニュアル作成等によるチームの資産の構築
・新入社員に対する声掛けや気遣い(他部署や別チームの新人に対しても!!)
・自分の業務以外でも多忙な同僚に対しての率先した助力の提供(手伝い)
・ムードメーカーとして組織の雰囲気をポジティブにしていく活動
1980年代にアメリカでこの『組織市民行動』についての研究が非常に注目を浴びました。この『組織市民行動』がチームや組織の中で存在するか否かによって、そのチームや組織の業績や生産性、離職率に影響するという研究が発表されたのです。
アメリカ企業は主に職務給制度と言って、就いている職務そのものの価値で評価されるどちらかというとチームワークより個人業績が重視される企業文化であるのですが、そういった土壌にも関わらず、この研究結果によって『組織市民行動』は多くの企業から興味を惹かれることとなりました。
上記の具体的な例をご覧いただいてもわかると思いますが、こういった行動はチームワークを強みとしてきた日本企業の固有の企業文化でもあるのです!!アメリカ企業には土壌としてそういった企業文化が育つ環境でなかったために、わざわざ研究対象になったのでしょうが、日本企業が高度成長期に発展できたのはこういった『組織市民行動』を生み出す土壌が企業文化の中にあったからだと思います。
残念なことに、2000年代初頭に『成果主義人事』が流行りとなり、企業に個人主義の考え方が浸透してしまうと、かつての日本企業のよい文化であった『組織市民行動』を執ろうとする従業員が組織からいなくなってしまいます。特に『成果主義人事』のあおりを食った管理職社員がこういった行動を執らなくなってしまったのではないでしょうか?
結果的に『成果主義人事』が一過性の流行りで、経営者の熱が冷めてしまったのは、個の力の重視が、『組織市民活動』に代表される伝統的な日本企業のストロングポイントだったチームワークの力を弱化し、結局業績の向上にはつながらなかったという事が大きいと思われます。
『成果』『業績』はもちろん大事
しかし、それを『個の力』で成し遂げるのか、『チームの力』で成し遂げるのか…。成果・業績に結びつける『手段』を検討する上でも『組織市民行動』のアメリカでの研究結果や2000年代初頭に起こった『成果主義人事』の一過性の流行りとその後の衰退を参考にして、御社にとってどのような人事評価制度、給与制度を構築するのがよいのかということを考察してくださればと思います。