企業を成功に導く人事評価制度ーヒント③

 目標管理制度ってどう?

『他社がやっているから』『最近流行りだから』という理由で目標管理制度を導入して、昇給や賞与への評価に組み込む中小企業もあるようです。しかしながら目標管理制度の長所、短所を理解した上で導入しないと、効果がほとんど得られず、管理職社員やスタッフに負担を強いるだけのものになってしまうリスクがあります。

目標管理制度は、その目的や運用方法を従業員や管理者をしっかり教育し、きちんと下準備したうえで導入するならば、非常によい制度とは思いますが、なかなか中小企業において、そういった下準備に時間をかけられるものではないと思います。また、何の教育の施しや下準備なく導入した目標管理制度にはリクスが顕在していることは知っておかなければなりません。当事務所では人事制度や昇給や賞与への評価制度とは直結せずに切り離して考えることをお勧めします。

 

理由は以下の5点です。

1)チーム主義ではなく個人主義に陥りやすい

2)人事評価制度と目標管理制度では活動サイクルが違う

3)低い目標設定が常習化する

4)数値での目標設定のみならず、数値で設定できない評価項目も重要

5)それぞれの制度で何を重視するかが違う。

 

以下に解説していきます。

 

1)個人主義に陥りやすい

 目標管理制度を評価の目的で構築すると、目標の達成度での評価に偏ってしまうため、成果主義、それも個人の成果の達成度が評価の対象となってしまいます。結果、チームや会社全体よりも、個人が重視される評価体制が構築されてしまいます。

そうなってしまうと、チーム重視よりも個人プレーが賛美される環境、よい評価を取るための低い目標設定の常態化、協調性の欠落等により、上司と部下の関係、同僚間、経営陣と従業員の関係がギスギスしたものとなってしまい、人事制度導入の効果の一つである“よい職場風土の構築”と真逆の方向に行ってしまうリスクが伴うのです。

 

2)各制度でのサイクルの違いについて

 通常の人事制度や評価制度の活動サイクルは昇給(賃金改訂)に対する評価に用いるものであれば年1回、賞与に対する評価に対するものであれば、年2回の活動サイクルが一般的です。対する目標管理制度の活動サイクルは、最低でも月に1度は目標達成度のフォローを行い、目標の設定変更や行動計画の変更を要する制度となります。よって、活動サイクルの点から見ても目標管理度は、昇給や賞与の評価に対して合致した活動サイクルになっていませんので、評価制度と直結するのはいささか無理がある制度といえる訳です。

 

3)低い目標設定が常習化するリスク

 目標管理制度は目標の設定が制度の前提にあることは言うまでもありませんが、目標の達成度が評価の尺度となるようなケースであれば、どうしても目標を低く設定してしまいがちになります。助言を行う管理者も期初の目標設定の際に、どの当りで設定するのが妥当か判断がつかないケースも散見されます。上司(管理者)が部下の能力や日ごろに動きに熟知した上で“決して不可能な数値ではなく、がんばれば達成可能な目標”というのを導き出せてあげれば一番よいのでしょうが、管理者教育がなかなか行き届かない中小企業であれば、そういったことも困難に思われます。

 結果、さほど達成が困難ではない目標を設定し、高い評価を得ようとする従業員が続出する弊害が起こり得ます。

 目標管理制度は評価とは切り離すことによって、社員それぞれ自由に目標設定をするという運営がよいように思われます。

 

4)数値で設定できない目標がないがしろにされる

 目標管理を評価と直結すると、目標設定は数値によって評価が判断ができるような項目に限定されてしまいますが、これでは数値で設定できないような項目は目標として設定しずらくなってしまいます。数値に表現できないような項目も重要な目標になってくることもあり得ますので、目標管理制度は評価と切り離して、目標設定の自由度を高めるべきなのです。

 

5)そもそも『目標管理制度』と『人事評価制度』では重視されることが違う

 最後に目標管理制度は行動計画を立て、実行することを重視し、それに伴う結果(アウトプット)に関してはさほど重視されません。行動計画がきちんとしたものであれば、それを実行さえすれば結果(アウトプット)はおのずと付いてくるだろうという考え方です

 それとは対照的に人事評価制度は結果に至るプロセス及び結果(アウトプウト)を半年または1年での一定期間内で評価するという考え方で、行動計画の立案、実行とはまたちょっと毛色が違ってきます。

自社の『身の丈にあった』制度の導入を!

前述のとおり人事・評価制度と目標管理制度はそもそもの目的や周期が異なるものであり、目標管理制度を賞与、昇給の評価に用いようとするとどうしても無理が生じてしまいます。

 二つの制度を並行して走らせ、それぞれのいいところを活用することができればこれに越したことはないでしょう。

 しかしながら、目標管理制度を運営するには、少なくとも月に一回のサイクルで本人の振り返りと上司(管理者)のフォローアップが必要になります。つまり計画達成度の進捗状況の摺り合わせを頻繁に行う必要があり、状況次第では目標の設定変更や行動計画の変更も必要になるケースもあるでしょう。

 管理者の訓練等しっかりした、下準備をした上で、こういった短期間の頻度でのフォローアップ体制が整備できる環境であれば、目標管理制度の導入も効果があると思いますが、一人一人に与えられる仕事の守備範囲が広い中小企業でこういった頻繁なフォローアップ体制が整備できるかというとやはり疑問が残ります。

 どうしても人的なリソースが不足がちの中小企業で、こういった『準備と運営に手間がかかる』制度に着手すべきかどうかはしっかり検討したほうがよいでしょう。

 人的リソースが限られている中小企業は『身の丈に合う』『運営にさほど負荷がかからない』しかもそれでいて『効果が確認できる』制度を導入すべきではないでしょうか。

当事務所が構築をサポートさせていただく『人を育てる人事制度』は“成果に繋がる行動”もコンピテンシーや成果項目に加える等、フレキシブルな設計が可能です。目標管理制度には頼らず、結果はもちろん、行動やプロセスも重視したい経営者様のご要求にミートする制度をご提案できます。

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