人事制度、給与・退職金制度、デキる人材の採用・育成(戦力化)・定着を三位一体でサポート!
大阪人事コンサルティングセンター
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退職金を外部で積立、運用するという考え方
“長年勤めた社員が定年退職した際、退職金がすごい高額でめちゃくちゃあせった!!”
こういった経験のある経営者の方も多いんじゃないでしょうか?
もちろん、高額になるような金額算定方法をすっと改定せずに運用しているということも問題ですが、退職金が将来的に多大な債務になるという危機意識を持たず、内部資金だけで何とかやりくりできる!という甘い認識でいたということも否定できないのではないでしょうか?
長年勤続した従業員に対する退職金は決して会社にとって痛くもかゆくも無い出費ではないはずです。しかも、それが短期間の間に複数の従業員に退職金を支払わなければならない状況になれば、結構なキャッシュアウト、つまり多額の経営資金の流出となり、それが財務状況を悪化させるリスクも念頭に置かなければなりません。
また、退職金支給対象者が急に自己都合退職を申し出るリスクも想定していなければなりません。経営者は常にまとまった額の退職金債務の発生に備えていなければならないわけです。
そういった意味でも退職金の資金準備というのは経営において非常に優先順位の高い命題だということがご理解いただけるのではないでしょうか。
ご存知でしたか?退職金原資の外部積立による様々なメリットを…
退職金の原資を自社の内部で準備することを“内部留保”と表現しますが、上記例のように支払う段になってあせっているようでは、本当にお財布を別にして退職金の準備をしているのか?という疑問もあります。また、ただ単に原資を内部留保させているだけ準備手段では、税制優遇措置のメリット享受も期待できません。
前述のように、内部留保が節税的にメリットがないことに対し、退職金原資の管理を外部に任せる方法、つまり、社外積立の方法では、その掛け金に対して税制優遇措置が受けられる等の様々な効果が期待できます。。
以下の表をご覧ください。
中小企業退職金共済 | 特定退職金共済制度 | 確定給付企業年金 (DB) | 確定拠出年金 (DC,401k) | 民間生命保険 | |
税制優遇 | 掛金全額損金扱い | 掛金全額損金扱い | 掛金全額損金扱い | 掛金全額損金扱い | 掛金一部損金算入可 |
支給方法 | 一時金 | 一時金 | 年金、一時金 | 年金、一時金 | 一時金 |
加入要件 | あり | あり | 法令上なし(加入団体による) | 法令上なし(加入団体による) | なし |
掛金の上限 | あり:月間3万円 | あり:月間3万円 | なし | あり:年間66万円 | なし |
運用リスク | - | ー | 原則会社側にあり | 従業員側にあり | - |
掛金の中途借り入れ | できない | できない | できない | できない | できる |
経営者も加入できるか? | できない | できない | できる | できる | できる |
ポータビリティ(退職後の持ち運び) | あり(条件あり) | あり(条件あり) | あり(条件あり) | なし | なし |
受け取り方法 | 従業員が直接受け取る | 従業員が直接受け取る | 従業員が直接受け取る | 従業員が直接受け取る | 会社が一旦受け取り従業員に支給 |
退職理由による支給調整(自己都合、懲戒解雇時) | できない | できない | 原則できない(規約によりできる場合あり) | できない | できる |
社外積立制度で資金準備をするメリットとして
・内部留保に比べ退職金の保全措置が優れている
・掛金の損金扱いが可能で税制優遇を享受できる
・月ごと、あるいは年ごとに計画的にコンスタンスな積立ができ、資金繰りの見通しが立てやすい
・積立金は退職給付債務から控除できるため、健全な財務状況を維持できる
逆に会社側にとってデメリットというと
・原則、直接従業員に支払われる制度なので、退職事由による金額調整が難しい(民間保険を除く)
という点が挙げられます。
社外積立による退職金の資金準備は上記のように色んな選択肢があり、制度ごとに特色があります。導入にあたっては自社のニーズに合う、適切な制度を選択することが必要です。
それぞれの制度の特徴を以下に解説していきますので、導入のご参考にしていただければ幸いです。
ここでは中小企業退職金共済と特定退職金共済についてご説明します。
一般的にそれぞれ、“中退共”“特退共”と略称で呼ばれることが多いので聞いたことがある経営者の方も多いのではないでしょうか?この2つは運営団体は違いますが、非常に似通った制度となっております。以下の表をご覧いただければ非常にわかりいいのではないかと思います。
中小企業退職金共済制度(中退共) | 特定退職金共済制度(特退共) | |
運営団体 | 国(独立行政法人勤労者退職金共済機構中退共本部) | 商工会議所、商工会等の“特定退職金共済団体” |
加入要件 | 有(資本金、従業員数で中小規模に限定、下記別表参照) | 運営団体に加入する企業または個人事業主 中小規模に限定されないが地域要件あり |
掛金の積立方法 | 従業員ごとに月額5,000円~30,000円の16種類の選択肢より選定 | 1従業員につき一口(1,000円)から30口(30,000円)まで加入できる。 |
事務手数料 | 無 | 有(費用は団体により異なる。掛金より控除) |
利回り、利率 | 予定利回り1.0%(2017年度) | 各団体の規約により利率は異なる(0,5%~1.3%くらいか?) |
積立期間と支給額のイメージ | 1年未満は不支給、積立2年未満は元本割れ、2年を超えてようやく掛金相当分、7年超でようやく1.0%以上の利回り運用が実現。 例)掛金月額5,000円 10年積立 基本退職金額632,800円*運用実績に伴う付加退職金は除く | 短期で退職する者でも一定の額が支給される。ただし掛金から事務手数料が控除されるため、掛金元本を上回る額を受け取るには長期勤続が必要。 例)掛金月額5口(5,000円)10年積立 退職一時金額597,800円 *支給額は団体によって違います。同じ都道府県内の商工会議所であっても委託金融機関や規約利率が異なるため支給額は異なります。 |
退職事由(自己都合、会社都合)による支給額調整 | 不可(従業員に直接支払われる制度のため) | 不可(従業員に直接支払われる制度のため) |
申し込み窓口 | 取り扱い金融機関、社労士会等 | 各団体が業務委託する生命保険会社 |
資本金または出資金 | または | 従業員数 | |
卸売業 | 1億円以下 | 100名以下 | |
サービス業 | 5千万円以下 | 100名以下 | |
小売業 | 5千万円以下 | 50名以下 | |
上記以外の一般業種(製造、建設、運送、保健衛生等) | 3億円以下 | 300名以下 |
中退共、特退共ともに中小零細企業にとっては“敷居が低さ”がそのメリットとして言えるでしょう。
申し込みもさほど煩雑ではなく、拠出金額も自社で選択でき、利回りも決して悪くはない。ということで簡易で使い勝手のよい制度ではあります。
反面、短期退職者に対しては不支給、もしくは元本割れの額しか支給されないことになるので、短期退職者が比較的多い事業所であれば、経営者が積み立てた掛金が結果的に掛け捨てになるということも起こりえます。また、従業員に直接支払われる制度ですので、退職理由(自己都合、会社都合)での金額調整ができないというデメリットもあります。
『とりあえず福利厚生として何らかの退職金制度を持っておきたい』『まずは自己都合退職分のみの退職金原資の確保という観点から考えたい』というお考えであれば、これら中退共、特退共を使った退職金制度の設計もひとつの効果的なご提案となりえます。
確定給付型企業年金(DB)とは?
確定給付型企業年金は英語でDefined Benefitといい通称DBと略されますが、直訳すると、Defined(決まっている、定義された)Benefit(利益、給付金)という意味です。
退職後、引退後の給付額(あるいはその計算方法)があらかじめ決まっており、仮に運用に失敗したとしても、従業員の退職金額は事前に約束されたものが補償される制度ですが、その反面、経営者が損出補填のリスクを背負うというデメリットもあります。(例外あり:ハイブリッドプラン、リスク分担型 等)
外部積立の委託先は?
確定給付企業年金には信託銀行や生命保険会社等が幹事会社となる『規約型』と企業年金基金が運営窓口となる『基金型』の2つの方式の受け皿があります。
・規約型
企業が幹事会社である信託銀行や生命保険会社と契約し、(原則)企業が拠出した掛金を規約に基づき、信託銀行や生命保険会社が契約に基づき資産運用を行う。法令上の人数要件はないが、幹事会社が提供するプランに人数要件が設けられ、100人未満の少人数の中小企業は引き受けてもらえないケースが多い。
・基金型
『企業年金基金』に掛金拠出を行う方式。『企業年金基金』が資金の管理運用を行うため資金の保全度はより高くなり、少人数の中小企業にも加入の門戸を広く開いている。
加入対象者
厚生年金の適用事業所の被保険者が対象で、会社(法人)単位で加入。
経営者や役員も加入でき、役員退職慰労金の原資とすることも可能
給付方式
老齢給付金(年金)、脱退一時金等
*老齢給付金(20年以上の加入者)は年金支給か一時金支給かは本人が選択できる。
*脱退一時金は少なくとも3年以上加入したものには必ず支給される。
*障害給付金、遺族給付金を任意で設けることもできる
退職金額とどのようにリンクさせていくか?
まず、モデル社員での退職金額のシュミレーションを予定される退職金額算定方法(ポイント制、別テーブル制、基本給連動型)で行い、節目になる在職年数及び定年退職までの大まかな退職金額を把握。節目ごとの年数及び定年退職の際の金額の給付が可能となるような掛金を計算する。(給付額の計算方法は決まっているため掛金の計算シュミレーションは比較的容易にできるでしょう。)
確定給付年金(DB)のメリット・デメリット
経営者側
メリット
・掛金が全額損金算入(上限もなし)
・経営者や役員も加入でき役員退職慰労金の原資とできる
・手厚い福利厚生の提供により、従業員の定着化が図れる
・従業員の給与の一部を掛金とする『選択制退職金制度』としての運用も可能
デメリット
・運用状態が芳しくない場合は追加の掛金拠出の義務を負う(例外あり)
・債務認識が必要なため会計上の処理が煩雑(例外あり)
・退職理由による減額が原則不可
従業員側
メリット
・確定した額の退職金給付が担保される(例外あり)
デメリット
・運用は企業(基金)任せとなり、本人は介入できない。
確定拠出型企業年金とは?
拠出した掛金とその運用状況により、給付額が決まる制度。DC:Defined(確定された)Contoribution(拠出金)の名の通り、掛金の額を確定し拠出を行いますが、最終的な給付額は運用次第で明確な支給額が保証された制度ではありません。
この制度は『企業型DC』と『個人型DC』の2種類がありますが、ここでは退職金の外部積立方法として機能する『企業型』の方を見ていきます。
企業型確定拠出年金(企業型DC)のしくみについて
・厚生年金適用事業所である企業等が加入でき、加入企業の事業主が信託銀行等の資産管理機関に掛金を拠出し、資金管理機関が金融商品提供機関(銀行・証券会社・生保会社等)と共にその運用を行う仕組み。
・その際、事業主が拠出した掛金は、個々の加入者たる従業員が株式や債券などの提示された運用商品の中から自らの判断で選択し運用します。その運用結果により老後に受け取る金額が影響されます。運用収益が出れば元本以上の給付が受けれますが、運用結果が悪ければ逆もあり得る制度です。そういったリスクもあることから事業主は個々の加入者たる従業員に投資教育を行うことが義務付けられています。
・また、従業員にとっての利点としては転職時にも転職先が企業型DCを導入していれば、転職前に積み立て運用した資産を転職先まで持ち込め引き続き運用できます。(ポータビリティあり)
・拠出限度額は年間66万円(12月から翌11月まで)で拠出金(掛金)は課税されず全額損金扱い。(運用益も同様に課税されない)
*ただし他の企業年金制度を併用して運用する場合は年間の拠出限度額は33万円に引き下がります。
企業型DCの加入対象者
・厚生年金適用事業所の被保険者(*個人DC型は左記要件問わず)
・経営者や役員も加入可
給付方式
原則老齢給付年金の形で60歳以後に支給されます。
*障害給付・死亡一時金は例外的に60歳到達前でも支給
*年金は5年以上の有期年金あるいは終身年金が支給
*規約により一時金を選択することもできる。
企業型DCのメリット・デメリット
経営者側
メリット
・企業側が運用リスクを負わない
・掛金が全額損金扱い
・経営者や役員も加入可
・規約により短期退職者に対しては掛金を事業主に返還させることができる。
(短期退職者に対する掛け捨て防止策を取ることができる)
デメリット
・法令上事業主義務である投資教育の手間や費用
・60歳以後の老齢給付となるため、若い従業員には『退職金』のありがたみ・恩恵が浸透しない。
従業員側
メリット
・運用収益が出れば将来もらえる給付が増額する
デメリット
・投資リスクを負う
・60歳まで給付を受けれない。
参考)個人型DCを活用した『中小事業主掛金納付制度』
企業型DCに加入するには、引き受け先を見つける必要がありますが、引き受け先ごとに企業規模等の要件があり、うまく見つからないケースも考えられます。そういった際は個人型DCを利用し経営者が掛金拠出を補助する制度が2018年5月から施行されました。従業員100名以下の企業にて導入が可能です。退職金の資金準備方法というよりはどちらかというと福利厚生の一つという位置づけですが、DCを使った手法になりますので、ご参考としてこんな方法もあるということを知っておいてもよいかと思います。
民間の生命保険でも退職金原資を準備できます!!
退職金の資金積立方法の最後として民間保険を使う方法をご紹介します。
この方法は養老保険や定期保険等の民間保険商品で資金を積み立てていき、保険の解約返戻金を使い退職金の原資に充てるやり方です。
この積立方法でもDB,企業型DCほどではないものの、ある程度の節税効果はあり、通常は掛金の4分の1から2分の1を損金扱いとできます。
この手法を使うことのメリットは以下の2点です。
①中退共や企業年金等と違い、直接退職した従業員に支払われず、一旦会社に入金されるので、退職事由による金額調整(自己都合or会社都合等)や懲戒解雇、諭旨解雇の際の減額調整に対応しやすい。
②急な資金繰りの悪化の際にも、解約や『契約者貸付制度』を利用することで救済される。
この民間保険を使う資金準備法は規模要件等もなくや基金等の引き受け先を探す必要もないため、導入の敷居は比較的低いと思われます。何らかの資金準備の必要性を感じられているにも関わらず、引き受け先等が見つからないようなケースであれば、民間保険を選択するものひとつの解決策にはなり得るでしょう。
退職金制度を新規に導入する、あるいは今の制度を見直す場合に検討しなければならない大事な3要素があります。
それは…
①退職金規程の制定あるいは改訂
②金額算定方法の選択
③資金準備方法の選択
の3つです。3つのうちどれが欠けても退職金制度の運営はうまくいきません。『資金準備』についてはこのページで見た通り、重要の要素の一つであることがお分かりいただけると思います。当事務所の『退職金設計・変更サービス』はこれら3つの要素全てを三位一体でサポートし、御社に最も適した退職金制度をご提案・導入します。